トークセッション「パラスポーツ×ビジュアルコミュニケーション」開催レポート

2018年7月5日に、トークセッション「パラスポーツ×ビジュアルコミュニケーション」が開催された。

2020年に向けて、各地でパラスポーツの体験会等が開催され、注目も集まるようになっていますが、まだ十分な状況とは言えない。本トークセッションでは、講演とトークセッションを基に、アイデアの創発とネットワークの拡大につなげることができ、時代に適したパラスポーツ・アスリートの魅力を再発見し、伝え方のヒントを得た。

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講演①:
「今こそ伝えたいパラスポーツの魅力と現状」

上原大祐氏/パラアイスホッケー選手・特定非営利法人D-SHiPS32代表

◎国内におけるパラスポーツの現状
上原氏から自身の経験を基に日本のパラスポーツの現状が紹介された。平昌パラリンピックを前に、長野県内の練習場にリンクを貸して欲しいという要望を提出したが、断られてしまった。一方、平昌パラリンピックで優勝したアメリカは、大学を中心としたスポーツ支援を行っていて、学内に車いす専用のトレーニングマシン等の専用機器が揃い、用具が故障した際にはすぐに修理ができる体制が整えられている。

日本のパラスポーツは強化を重点的に行ってきたが、普及は行ってこなかった。それは選手だけでなく、選手を支えるスタッフにおいても同じである。パラスポーツには用具マネージャーという用具のメンテナンスを行う重要な役割がいる。選手の強化・普及とともに、スタッフの強化・普及も非常に重要なものであり、日本パラスポーツの大きな課題になっている。

長野パラリンピックから20年経った今でも、パラスポーツ支援の体制ができず、2020年のパラリンピックもただのイベントで終わってしまったら、パラスポーツ界は何も変わらない。パラスポーツを「日常化」するように、政府、社会、企業、個人からの力が必要である。

◎パラスポーツ×○○
パラスポーツは「障がい者スポーツ」といわれ、他人事として受けとめている人が多い。「日常化」するためには「自分事」にすることが重要である。例えば、車いす同士がぶつかり合う音をその場でDJがミックスする音楽イベントを行うなど、このような「パラスポーツ×音楽」イベントの実現で、パラスポーツを知らない人たちが興味を持つきっかけの場を作ることができる。「パラスポーツ×○○」で、日常化と自分事にすることが現実的につながっていく。

◎誰でも楽しめるスポーツ
足に障がいがある人は、アイスホッケーを行うことはできないけれど、足を使わずに行うことができるのがパラアイスホッケー。いつものルールを少し変えるだけで、運動の苦手な子供が車いすバスケを楽しむことができる。「誰でも楽しむことができる」「誰でも主役になれる」ということが、パラスポーツの魅力である。

◎する・見る・支える
パラスポーツを「する」ことで、競技人口を増やす。パラスポーツを「見る」ことで、選手のメンタルを鍛える。パラスポーツを「支援する」ことで、競技を存続させる。無理のない範囲でパラスポーツを支えて欲しい。例えば、保育園に訪問したことで、子供が非常に興味を持ち、子供から先生や親へと興味の輪が広がった。また、登園拒否をしていた子も幼稚園に来るようになり、親と先生もコミュニケーションを取ることが出来るようになった。2020年はスタートになるように、パラスポーツを通じて、活躍できる子供達を増やしていきたい。

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講演②:
「パラスポーツ表現の
これから」

越智貴雄氏 /写真家・一般社団法人カンパラプレス代表

◎世界のすごい?!パラリンピアンの紹介
まだまだ知られていないパラスポーツの世界。オリンピック記録を上回るパラリンピアンや、オリンピック出場記録を突破しオリンピックに出場したパラリンピアンなど、世界のパラリンピアンの紹介があった。車いすバスケットの選手は、車いすを巧みに操り片輪でのプレーなど迫力満点である。用具とともにあるパラスポーツ。もちろん用具にもこだわりがあり、アイマスクなど個性がでるものも様々。義足を枕に記念写真なんてパラリンピアンのお茶目な面もあった。

◎パラリンピックの衝撃
2000年に開催されたシドニーオリンピック・パラリンピックが越智氏とパラスポーツとの出会いであった。高橋尚子選手の金メダルなど大いに盛り上がったシドニーオリンピックにて写真を収め、充実した時間を過ごし帰国準備をしていた際「パラリンピックの取材もしてみないか」と依頼されたのがきっかけであった。依頼されたこと自体がうれしくて快諾したが、その後開催に向けて徐々に不安が募っていった。

当時、パラスポーツ、パラリンピックのイメージは障がいのある方が頑張っているもの、かわいそうと思いこんでいたからである。その中でカメラを向けていいものなのか真剣に悩んだ。しかし、初めてのパラリンピックは衝撃を受けた。はじめに驚いたのは開会式。みんなが笑顔であった。今思えば当たり前だが、びっくりした。その後の競技も、車いすレーサーや義足の高跳びなど迫力にさらに驚いた。自分の世界が変わった瞬間でもあった。

◎パラスポーツの変化
2000年のパラリンピックの際、新聞での取り扱いは主に福祉面であった。そしてクライアントからは「車いすの入っている写真」や「一生懸命頑張っている姿」を求められた。現在は求められるものが変わってきている。新聞でもスポーツ面で取り上げられるし、選手の真剣さや、鍛えあげられた肉体など、何よりもかっこよさが伝わる写真を求められている。その変化の理由としてアスリートの活躍によるところが大きく、世の中の障がいに対する抵抗が少なくなってきている。ただし、まだまだ誰もが住みやすいバリアフリーな社会ではない。残念ながらユーザーの意見が全て取り入れられているわけではない。変えていこうという機運は高まっているので、2020年を起点に変えていきたい。

◎現在進めているプロジェクト
まだまだ義足は隠すものという認識がある。義足ユーザーやその家族でさえも、外に出なくてもいいという人もいる。そんな考えを変えていくために立ち上げられた「切断ヴィーナス」というプロジェクト。義足は例えばコンタクトレンズと同じようなものではないかという考えで「不便ではあるが、不幸ではない」ということを見てもらいたい。
 

トークセッション

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前半の講演から参加者が感じたことや気付いたことなどを付箋に書き出し、ホワイトボードに貼り、2人の講師が話題を取り上げて、お互いに意見を交換しながら、リードしていくなど、場内のあちこちでセッションが生まれるように進められた。

「例えば、パラスポーツを観戦するとき、選手の技術だけはなく、ガイドとの連携・信頼関係もパラスポーツの魅力となる。」(越智氏)

「2月に開催された平昌オリンピックで印象に残ることは、ボランティアが選手の母国語で挨拶すること、観客が競技に関するルールを知らなくても楽しめること、パラスポーツを通じて多くの友達ができたこと。」(上原氏)

そして、今回のテーマである「パラスポーツ×ビジュアルコミュニケーション」について、パラスポーツの魅力が世界中に広がっていくために、ツールとして写真の重要性が伝えられた。写真を通じて多くの人がパラスポーツを深く認識できて、以前より社会の意識・認知も少しずつ変わってきた。短い時間でしたが、さまざまな業種・職種の方が集まったことで、多くの可能性を広げることができた。

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グラフィックレコーディング

会場にはInnovation-Team-dotのチームにより、グラフィックレコーディングが紹介された。当日の内容を絵で表現されており、終了後のネットワーキングで、グラレコを見ながら、講師と参加者同士の交流や意見交換が行われた。


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トークセッション 開催レポート

これからも、定期的にイベントに分野におけるサステナビリティについてセミナーやトークセッションを行っております。
ぜひとも、ご参加いただければと存じます。よろしくお願いいたします。